食べ物エッセイスト 小日向 舞さんエッセイ

食べ物エッセイスト 小日向 舞さん

食べ物エッセイスト 小日向 舞さん

天下一 meets チョコレート

「口福」を飲んだ数日後に、値段ではワンランク下の「天下一」を飲んだ。価格が下だと、味が落ちるかと思いがちだが、けっしてそんなことはない。口福に比べれば多少旨味は減るが、それはそれで、また別の味として楽しませてくれるのである。

天下一の特徴は、「まるい苦味」と、「まるい渋味」、そして「まるい旨味」が、均等にとけ込んだ味であることだろうか。旨味はけっこうあるのだが、それに対抗するくらい、渋味と苦味もちゃんとある。繊細すぎず、尖りすぎず、しっかりとした太い芯のある味だ。そのなんとも豊かで「お茶らしい」味は、抹茶に似た味わいのようにも感じられる。

天下一の持つ強い味を楽しむために、私は、茶葉を大目にして、どろっとしそうなほど濃く入れるのが好きである。少々濃い目にしても、それぞれの味の要素のバランスが崩れることはないため、渋すぎたり、苦すぎたりすることはない。
もちろん、お茶だけを楽しんでもいいのだが、濃厚な味のチョコレートなどと合わせてみるのも乙である。天下一は、口福のような、角がほどんど取れた「まん丸な味」というよりは、むしろ「まるい角」のある味だと思う。それがこのお茶の持つ強さであり、このお茶独特のコクともいうべきものを生み出していると思う。そこに、同じくらいの強さの味のチョコレートを持ってきて、食べては飲み、飲んでは食べて…と、行ったり来たりすると、おやつの時間の満足度が、一気に上がる。

煎茶の葉の、香ばしいような甘いような香りは、チョコレートのそれに、少なからず似ていると思う。天下一は、味そのもののバランスというか、波長みたいなものが(味の波長と言っても、イメージばかりでどんなものなのかよくわからないが…)、なんとなくチョコレートに似ている。だから、チョコレートとの相性がいいのかもしれない。たまにはちょっと奮発して、おいしいチョコレートを買って来て、天下一とともに味わいたいものである。

このお茶は、これまで飲んだ煎茶の中で、一番太くて強い味だと思う。それにしても、お茶の個性はさまざまである。さまざまな味の要素のバランスで、無限の味が生まれ、無限の楽しみ方がある。天下一を飲んで、またひとつ、お茶の味のバラエティーが広がった。

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