食べ物エッセイスト 小日向 舞さんエッセイ

食べ物エッセイスト 小日向 舞さん

食べ物エッセイスト 小日向 舞さん

「秋冬番茶」

前回にひきつづき、店主から秋冬番茶なるものをいただいた。前回の番茶が親子番茶と言われるものであるのに対し、今回のものは、それとはまた別の番茶ということだ。どうやら刈り取る時期やなんかで、番茶の呼び名は変わるらしい。何が違うのか比べてみるのは楽しいものである。

袋を開けてみると、葉っぱの状態で、すでに親子番茶とはずいぶん違っている。親子番茶が、細かくて葉の部分ばかりが入っていたのに対し、秋冬番茶は、葉がもう少し大振りで、葉よりは色の薄い葉脈のようなものが混じっている。全体的に、いささかバサバサしている。

さっそくいれてみて、まずは熱いまま飲んでみると、親子番茶以上にあっさりとした味がする。一瞬、「あれ、葉っぱが少なかったかな」と思ったほどである。しかし、薄くて水っぽいということはなく、十分おいしくいただける。今度は冷ましてみた。親子番茶は、冷ましたときに独特の香りが出てきたが、この秋冬番茶にはそれがない。渋みや苦みはほとんどない。

私は、一回飲んだだけではよくわからないと思い、また次の日に、今度は葉を多めにして、いれてみた。すると、前日よりは濃くなったが、やっぱり香りや味は、親子番茶に比べると薄かった。冷やしても同様、とてもあっさりしている。

このお茶は、「お茶」として味わおうとすると、少したよりないかもしれないが、気軽にごくごく飲むのに適していると感じた。味や香りが薄いことが、決して「うまくない」のではなく、どちらかというと、うどん屋やなんかで出てくるような「飲み慣れた味」なのである。何の変哲もないお茶と言うと、なんだか良くないもののように聞こえるが、飲み方によっては、逆にそれが長所になる。

たとえば食事の引き立て役としては、最高のお茶である。「和菓子とお茶」という組み合わせだと、菓子の甘さには、茶の渋みや苦みが恋しくなるが、食事となると、あまり茶の味が出しゃばりすぎると、よろしくない。その点、秋冬番茶は控えめな味で、食事中の口直しにはもってこいだ。水よりも何よりも、舌を「リセット」するのに丁度いい。
だから、「酒無しデー」や「休肝日」の夕食には、大変おすすめである。

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