食べ物エッセイスト 小日向 舞さんエッセイ

食べ物エッセイスト 小日向 舞さん

食べ物エッセイスト 小日向 舞さん

「初めてのほうじ茶」

京番茶を飲んで育った私は、世に言う「ほうじ茶」を、ほとんど飲んだことがない。
京都でも、洋食屋さんや、そば屋さんなどに行くと、ほうじ茶が出てくることがあるが、家でいれたことは、今回かねも社長にいただくまで、一度もなかった。

「ほうじ茶は、京番茶と同じように、煎ったお茶です」と、かねも社長。が、家に帰って袋を開けてみて、私はびっくり仰天した。茶色い茎がいっぱい入っているではないか。これが私の、ほうじ茶とはじめての「ご対面」である。
私には、なんとも妙な姿をしたお茶に見えたが、これはつまり、私に茶の一般常識がないということなのだろう。
すぐにでも飲んでみたいが、はて、どうやって入れたらいいのかわからない。とりあえずネットで調べてみたところ、どうやら京番茶と同じように、沸きたての熱い湯で入れればいいらしい。「なんや、それやったら簡単やわ」と、分量は、ふだん京番茶で入れるときと同じくらいの量を入れてみた。しばらくたってから、鍋(大量に沸かしたので)を見に行くと、すでに真っ黒になっている。「しまった。これは出過ぎたにちがいない」と思って飲んでみると、案外そんなことはなかった。しっかりした味がするにもかかわらず、渋くなく、苦くなく、とても飲みやすいお茶になっていた。また、京番茶とは、全然ちがう香ばしい香りがする。癖もない。同じ煎ったお茶でも、これほどまでに味がちがうとは驚きだ。

気になるお値段は、100グラム500円だ。私が普段飲んでいる京番茶は、なんと200グラムが368円である。そう思うと、少々高いような気もするが、京番茶は本当の「がぶ飲み専用」で、ほうじ茶は、寝る前のちょっとほっこりしたい時に、ゆっくり入れて、飲むのがいい。渋みや苦みがない分、甘いモノも欲しくならないので、香り豊かなほうじ茶だけで、じゅうぶん満足できる。
飲むお茶のレパートリーが増えるということは、ゆたかな時間が増えるということ。お茶の種類によって、その時間の過ごし方も変わってくる。私にとってほうじ茶は、寝る前のひとときを共に過ごす良きお友となったわけである。

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